2009年 05月 26日
再録1999 の再録
「選択と集中」というコトバが流行り、世の中が効率化とマニュアル化してゆくのをユーウツな気分で眺めながら、ぼんやり途方に暮れていた。
「たるんだ自分にカツを入れるには今まで見たことのない世界を見よう。」
豪州に行ったのに理由はない。同僚が大きな決断をし、豪州に渡ったのを頼って行っただけだ。どこでもよかった、と言えなくもないが、彼の行動がなかったら海外への一人旅すら思いつかなかっただろう。
30歳半ばでバックパック。当然そんなヤツはいるはずもなく、現地ツアーではツアコンすら年下。いろんな国からやってきた彼らはほとんどが一人旅だった。一緒にいると昔からの友のように楽しく過ごし、別れる時はよい思い出だけを残して去ってゆく。彼らに再び会えることはないだろう。残ったのはあの時、確かにすごしたやわらかな時間だけだ。
旅から戻ってまもなく、唯一アドレスを聞いたS子に賀状を送った。戻ってきた便りには、旅先で知り合った人と結婚し、沖縄で暮らしているとのこと。なるほど、彼女らしい。
あれから10年。異国の旅を心配していた父は他界し、今はその跡を継ぐ。在籍していた会社は選択と集中によって様変わりし、同僚の多くは転職した。豪州の彼はゴールドコースト、シドニー、パースと転勤し、今はメルボルンにいる。仕事だが、図らずもラウンドしている。日記を振り返ってる頃、さんざん飲み歩いた同僚の女性がこの春結婚したとの連絡。なるほど、時は流れている。
呆れるほど残された膨大な日記と写真は、あの時の精神の昂揚をあらわす。読み返すと本当にこれが自分の言葉か?と思うようなことが書いてあり、失笑する。
効率化とマニュアル化の近視眼を尻目に、連中は好き勝手に生きていた。赤砂にまみれた汚いカッコして「どこからきたんだ?」と気さくに話しかける。大自然を庭にして楽しくおおらかに暮らしているヤツらがいる。「かまわない、かまわない。」
今では望むべくもない旅だが、あれがあったから心静かにいられることが、確かにある。
「Pokey」を辞書で引くと、(部屋など)狭苦しい、とある。好きだったミニカーの名前と、店を揶揄したダブルミーニングの「MATCHBOX」と重なり、驚く。
今日もMATCHBOXにいろんな人が来て、いろんな話をする。知らない世界を聞き、いろんなことに思いをめぐらす。このカンジはちょっと、旅をしているみたいだ。
最後までイケるとゆーことが今日わかりますた