キュニョーの砲車

   歴史上初めての自動車。 
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 こんな時代が来るとは思ってもみなかった。本屋にはミニカーに関する雑誌が並び、ミニカー専門のショップには、かつては考えられない車種が製品化され、ないものはないんじゃないかと思うほど充実している。とても追いきれるものではないが、気に入ったのをコツコツ集めているうちに、世界中の車がやってきた。でも、手に入れていない車もたくさんある。誰もが憧れる高級車より、だれも見向きもしない地味な車や商用車、そんなのを予期せぬところで偶然見つけたときの喜び。それが忘れられなくていまだコレクションを続けているのかもしれない。

 骨董市でクラシックカーのミニチュアを見つけた。簡単な鋳物にプラスチックの車輪のちゃちな作りだが、車種が珍しい。メルセデスの最初の試作車、カール・ベンツの三輪車とともに目を引いたのが、キュニョーの蒸気自動車だ。
 フランス陸軍は、馬に引かせていた大砲を運搬できる機械の開発をニコラス・ジョゼフ・キュニョーに命じた。キュニョーは大きな蒸気釜を先端にぶら下げた奇妙な三輪の機械を作り上げる。大衆の前に出現した奇妙な機械は、じりじりと動いたものの、釜の湯は15分で空になった。再補給して移動を繰り返すも、作業を伴って時速4キロほどでは到底馬には敵わない。さらに、先端の大きな釜は極端にバランスが悪く、ブレーキも稚拙なものだったため、壁に激突。史上初の自動車は史上初の自動車事故も起こしてお蔵入りになってしまう。時に1769年。自動車が市民生活に入ってくるのはそれから半世紀は待たねばならない。大量生産によるモータリゼーションの起爆となったT型フォードの発表は1908年、139年後のことであった。

 街を颯爽と走る自動車。流麗な美しいスタイルと高性能。ブランドの伝統と栄光が自動車という機械を憧れの対象とするだけでなく、生活、文化、産業、国策と、人々の生活と抜き差しならぬ存在となっている。その先駆けはといえば、大きな釜をぶら下げた奇妙な三輪の機械であった。キュニョーの砲車がじりじりと走り出さなかったら、今の世界はなかったのである。
 骨董市で見つけたキュニョーの砲車、ブランドも生産時期もまったくわからないけれど、歴史上初の自動車のミニチュアをコレクションに迎えることは意義があることだ思う。
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by match_boxes | 2014-01-24 12:34 | ミニカー莫迦 | Comments(0)

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