仕入れの道すがら、目新しいロードスターを見つけた。ははあ、これがRFね。
公道で持て余すほどの高性能はシンドイし、それを求めるほどの技量もない。小気味よく走る大き過ぎないスポーツカーというのがひとつの理想なのだ。それに適うロードスターは憎からず思っている。
一日試乗体験させていただいたそれは、軽量化という原点回帰が大きく寄与して気持ち良いクルマに仕上がっており、楽しさは十分に理解できた。そこに新たに加わったのがRFだ。
良く出来た幌にこれなら電気仕掛けは必要ないと感心したが、メタルトップの安心感は捨てがたい。それに応える追加車種はなんとファストバック。ついにファストバック・クーペか、と期待したのだが実際はデルソルみたいな大仕掛けのコンバチだった。
まあ、ともかく見た目はカッコいい。
屋根を開けた感じはオープンというよりデタッチャブルトップといったところ。背中半分はタルガみたいにピラーが残るからオープンカーに乗っている開放感はない。まる見えじゃコッパズカシイ人には囲まれ感が程よいかもしれんが、この小さな屋根取っ払うのに大きな蓋を上げ下げするのはなんかコッパズカシイ。こんな小さな屋根ならパカッと外してシートの裏に差し込むとかのほうが粋ではないか。走行中に使えない大仕掛けのためにロードスターの100㎏増しではせっかく軽量に仕上げた意味がないではないか。
重量が増えたRFの排気量は輸出仕様の2000ccと大きくなっている。クラッチ繋いだ時のトルク感の違いとか試したかったのだが試乗車はAT。イージードライブを望むユーザーを想定しているのかもしれない。実際、次の試乗の方はロマンスグレーの年配だった。走ってみるとスルスルと加速してすぐ法定速度を超えてしまう。乗り味もしっとりして寸法から想像するよりずっと落ち着いている。出来はいいけど、スポーツカーに乗っている感じがしない。
小型FRの車体をロードスター専用にするのはもったいない、ファストバッククーペも設定すれば別の需要もあるのに。と思っていたのだが開発者にはわからないらしい。
RFはロードスターにクーペ風の蓋をつけたお手軽ファストバックだ。ダウンサイジングでバリオルーフが困難だったのか、それともファストバック・ルックありきのギミックなのか知らぬが、車体そのものには何も手をつけていない。基本をあれほど煮詰めたのにここで手抜きをしやがった。
ロードスターは英国の小型スポーツカーを範にして現代的に焼き直したもので、すでに需要の下地が出来ていた。それでも長きに渡り唯一の存在として育て上げたことには拍手を送りたい。だが、英国様式を知っているのなら、キチンとしたファストバッククーペを作って欲しかった。
かつてのベストセラーMGBにはMGB-GTというファストバッククーペがあった。 +2のシートを備え、V8の大きいエンジンを載せた正しくGTに仕立て上げられていた。
ファストバッククーペにするには車体の後半を大きく変更せねばならない大仕事だ。それをしてもGTという別の需要があることを理解していたのだろう。
いくつもの賞をとったロードスターなのに、こんなんもできまっせ〜っとカッコだけのお手軽ファストバックを嬉々として出してきた設計陣。2台もオープンボディが要るのか?懐の浅いところを見せられたようで残念だ。
パリの街角で見たMGBの姿を披露する。オープンスポーツカーとそのファストバッククーペ。どちらも、とても魅力的だと思うのだが。