そこは、異様な雰囲気が漂っていた。商店街の途切れたところにある、つる草に覆われた一軒家。小さな看板をみればカフェのようだ。店内には古い映写機、タイプライター、怪しい本や漫画が天井まで詰め込まれた本棚。梯子みたいな急な階段を昇れば、意外やパーティができそうな空間。反対の急階段を下りると小さなカウンターバー。手作りらしい辻褄の合わない造作は、トイレなんかドアがやっと人ひとり分しか開かないありさま。どう見ても営業許可が下りそうにないしつらえだが、裸電球の暗くて狭い空間は不思議と居心地がよかった。
 
 一人でやってるマスターは味のある風貌。余計なことは喋らないし、サーブしたらすぐバーカウンターに引っこんじゃうんで、暗い店内は貸切みたい。うまいドリアをつまみに水割りちびちびやりながら、いつまでも本を読んでいても平気だった。どこの街にもない店の雰囲気が好きで、酒をあまり飲まない自分にとって唯一の「行きつけ」だった。
 夏以来行ってなかったな、と秋の終わりに訪ねたら、店は消えていた。更地には「売地」の立て看板。行きつけが無くなって寂しい、というより、やっぱりな、という気分。だって、どう見ても儲かってないし、商売っ気もなかったし。でも愛想もなく店を閉じたのはあのマスターらしいな。いまごろどこでなにしてるんだろ。

 店というのは不思議な場所だ。それを必要としてもしてなくても、人が出入りする。
スケート行ったり、街歩きしたり、ライブ行ったり、映画見たり。カブ修理したりお伊勢参りに遠征までもした。ちっぽけなマッチ箱では収まりきれず、ここからいろんなところへ飛び出していける。
 
 マッチへお越しになったみなさま、ことしはたいへんお世話になりました。
来年もご愛顧のほどよろしくお願いします。
 そして、まだ見ぬMatchBoxへのあたらしいお客様。
どんな方が登場するか、みんなココロ待ちにしております。    2013.12.31. MatchBox.

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by match_boxes | 2013-12-31 23:00 | 雑記 | Comments(0)

モノに物思う

 いよいよ暮れも押し迫り、街は新年を迎える空気になっている。人並みに大掃除、というほどでもないが、いつもよりちょっと念入りに片づけをしている…のだが、全然捗らない。なにしろモノが多いのだ。モノが無ければサッと雑巾がけで済むし、広い面積なら流行りのお掃除ロボットなんかでくまなくキレイにもできるだろう。モノはそれ自体がホコリ被ってたりするから、掃除をするつもりがモノの手入れになっていたりする。これじゃ捗らんわな。

 断舎利、なんて言葉が流行った。愛着の湧かないものはどんどん捨てよということらしい。なるほど、潔いことだ。モノがあることで部屋が雑多に窮屈になっては、精神衛生上もよろしくない。マンションのモデルルームのような暮らしができたら、さぞ快適だろうと思ったりもする。

 モノが捨てられないのは、多小なりとも愛着があるから。とっておいたのも忘れていたモノでも、時を経て改めて眺めると愛着がより一層深くなっていることもある。整理整頓の行き届いた無菌室みたいな空間で、ネットの情報だけで暮らす。そんなデオドラントな生活だけが理想の未来でもない。

 棚にある真空管ラジオのホコリを拭う。もともと蔵の中で眠っていたものだ。誰かが愛用していたから、捨てられることもなかったのだろう。電源を入れればやわらかい音がする。そうだ、大晦日の紅白をこの古い真空管ラジオで聴いてみよう。平成になってから早四半世紀の年の瀬に、デジタル放送の紅白がはるか昔の真空管ラジオから流れた時、どんな心地がするだろう…。
 こんな調子だから、掃除は一向に捗っていない。

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by match_boxes | 2013-12-30 19:32 | 雑記 | Comments(0)

MerryXmas!

十日市が終われば街はクリスマス一色。この風物がこうも津々浦々に浸透していると、「この国はクリスチャンの国だ」と外国のヒトから思われないかしらん。

とはいっても、寒い季節に華やかな雰囲気はなかなかいいもんである。いつも通り素っ気ないこの店にも、Xmasプレゼントが届いた。ありがとうございます。
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もうクリスマスにワクワクはあんまりないけど、こうして乾杯できるのは、やっぱり嬉しいものです。
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☆☆☆☆☆(^^)
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by match_boxes | 2013-12-24 23:55 | 日記 | Comments(0)

買ってはいけない

 モノを集めたがる性分である。気に入ったのがあると、ついもう一つ、色違いをもう一つ、とキリが無い。寸法が揃っててバラエティに富んでたりするとなおいけない。旅先の土産物屋で、ふと「箸置きを集めようか」と思ったが、題材がありすぎて大変なことになる、とアタマ冷やしてやめておいた。
 それが大好きな乗り物を模したモノだともう大変。小スケールミニカーはモノゴコロついた頃にトミカ黎明期に当たったため、もはやライフワークだと諦めているが、そのほかにも誘惑が多い。
 トミカでココロと財布を鷲掴みにしたトミーはトミーテックという刺客を送り込んで更なる攻撃を仕掛けてくる。お子ちゃまに絶大な人気を誇るプラレールも、ビスタカーやレッドアロー号をラインナップしだして大いに心を揺さぶられた。鎌倉の大仏と小山のトンネルをセットした江ノ電セットは歯を食いしばって手に入れるのを堪えた。
 ま、いい加減トシ喰ったんで物欲のシュトルムウントドランクは鎮静化しつつあるが、「しめしめ、ずいぶん値上りしとるワイ」と持ってるプラモの再販価格をチェックしてはほくそ笑むおもちゃ屋巡りは定期的にしている今日この頃である。いつものようにおもちゃ屋を覗いたら、こんなものを発見してしまった。
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 び、Be-1❢しかもミニ四駆❢瞬時に燃え盛る物欲の炎をもみ消そうとするが、小さく記された「特別限定モデル」の文字にますます燃え上がり、火の玉ボーイはレジに猛進したのであった。
 やれやれ、また禁断の世界に踏み込んでしまった。こいつをスケールモデルとするにゃ武骨なミニ四駆シャシを解体せにゃならぬ。他から転用できるならぶった切れるが、専用パーツだとそれも憚られる。調べだすと、ラインナップにウニモグ、ジムニーなんかがあって、これも欲しくなる。新商品には次期コペンも控えていて、タミヤも子供のおもちゃと見せかけて、刺客を送り込む手筈を整えていやがる。
 Be-1は自分へのXmasプレゼントさ、と嬉しさにユガむ口元をクールに抑えて立ち去ろうとすると、妙なモノが目に入った。「コップのフチ子さん」?
 小さなOLがコップの淵に座ったり寝そべったりよじ登ったりしている、というフィギュアだ。フチ子さんはとりわけ美人でもモデル並みのスタイルというわけでもないけれど、お嫁さんにするにはいいな、と思わせる楚々とした感じである。ポイントは制服。男女雇用機会均等法が施行されてから先減りつつあるが、女子社員の制服姿はなかなかいいもんだ。「お先に失礼しま~す」と帰り際の私服姿も意外な感じがしていいけど。昼時にカーディガン羽織って、お財布持った腕を交差して「さむ~い」とか言ってコンビニにそそくさと急ぐ制服姿のOLっていいよなあ…って、なにを言ってるんだオレは。
 これはおもちゃを装った刺客だ。見ようによってはキワドイ体勢もあって、あきらかに子供じゃなくて一人寝の寂しいバチェラーに忍びこもうとしている。こんなモノにハマったオッサンがおもちゃ屋のガチャガチャを真剣にやってたら不気味ったらありゃしない。オレはこんなモノ買わないぞ。ぜったいにな…。
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by match_boxes | 2013-12-22 23:55 | 雑記 | Comments(0)

小箱なバーの毎日
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