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ジャパン・ダイナミズム

そこへ行く目的すらわからぬままに旅に出た。目指すは二十年振りの遷宮なった伊勢神宮。次の機会にはもう見ることもままならぬかもしれぬ。1000キロの弾丸ツアーである。

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自動車という遊具で走る巨大遊園地は周到に整備され、ETC通過を数回経るだけで遠い目的地まで到達する。遊園地とは職業的に利用している向きには失礼だが、SAのレストランに併設された土産物屋のノリは明らかにそれだ。鉄道網が充実した地域に暮らす者には、自動車利用を前提とした巨大インフラに入り込むと妙に違和感を覚える。

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伊勢湾岸道には度肝を抜かれた。湾に点在する小島を一文字に塗り潰して延びる橋梁はトウキョウ湾岸とは異質のスケールだ。地方小都市の市街を這いずり廻っている皮膚感覚に暴力的な広大三車線が突き刺さる。デカい。この巨大建造物を作り上げたのもスゴイが、日常として生活圏に取り込む順応は、いや、たいしたものではないか。

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神棚の真ん中に鎮座まします天照大御神のお札。そのご神体を祀っているのが「一度行きたや」伊勢神宮である。参道入り口には大型観光バスが続々到着し、放出された参拝客は引き込まれるように行進する。雨降りの平日にもかかわらず、「ありがたやありがたや」と参拝客は引きも切らない。他力本願を小銭で済ませ、一族郎党に配る御守求めてガマグチ開けて社務所に殺到する。観光でお伊勢参りする身分の方々が今以上なにを御祈願することがあるかと思うが、人々の願いは尽きることが無い。

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煩悩を参拝でチャラにして大義を果たした参拝客は、気が大きいまま「おはらい町」に雪崩込む。原価に対して根拠が不明な値札の御札を買い込んだ後は、金銭感覚が狂って「滅多に来られないんだから」とか言って、食って食って土産物買いまくる。おかげ横丁の隣の客に接触しそうなほどギュウ詰めの店先で、満腹だというのにぜんざいを食べつつ、この旺盛な消費活動を眺めれば、なにかしなきゃ、と気が急く。お伊勢参りは確かに馬力が出る気がする。

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帰途、高速に乗る前にコンビニ休憩。目前に広がる浜名湖はさぞや絶景だろうが、夜間はただの闇である。そこを貫くように一筋の光線が走り去る。地元で見る新幹線は高架をゆっくりと発車していくところしか見ないが、地上を走る東海道新幹線の本気の走りには圧倒される。あの豪速トレインのなかで出張帰りのサラリーマンが乾杯していたり、遠距離恋愛の逢瀬の余韻を車窓に浮かべたり、土産物沢山持ったのが口開けて爆睡しているのである。時速300Km/hを日常生活に取り込む時代を、東海道を徒歩で移動した人々は想像できただろうか。

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深夜の高速道路は鉄火場である。見覚えのある宅配会社のフルトレーラーが列をなし、ペースの速いインディペンデントがのっそりと追い越し車線を塞ぐ。背後からはひときわ眩いHIDの光線が迫り、これ見よがしの挑発を仕掛ける。霧だというのにシフト二段落としを強いられる真夜中の高速。海老名から都心へ向かう高速では、キャノンボールでもしているかのような車列が迫る。道を譲れば、回送のサインを掲げる個人タクシー。白に青帯、黄色いデンデンムシをのっけたレクサスやクラウンが、街中を流すのとはまるで違う勢いでカッ飛んで行く。神風タクシーは健在なり。

西欧が堅牢な神殿物を構築して永くその威容を保ってきたのに対し、天災の多い我が国では遷宮を行うことで精神を継承する道を選んだという。スクラップ&ビルドを繰り返して変容する街の姿はそれに倣ったものなのか。築城の技術は広大な建造物を作り出し、天駆けた戦闘機群は地上に降りて超特急や高性能車に姿を変えて疾走する。世の中が進化しても、お伊勢参りの慣習は今も続く。輪廻転生、変り続けても変わらぬ精神のジャパンダイナミズムを肌で感じる旅だ。
by match_boxes | 2013-11-16 11:16 | 雑記 | Comments(0)

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