いにしえ模型 いすゞ117クーペ 1973  (フジミ 1/24)


 蔵を整理していたら、ホコリ被った琺瑯看板の下から木の箱が出てきた。よくよく見れば電気コードが出ている。ははあ、これはラジオか、真空管ラジオ。
 これは面白いものを見つけたわい、と埃を払って電源を入れてみる。ほんのり電球が灯って通電したが、うんともすんとも音が鳴らない。このまま火でも吹いてはいけないのですぐに電源を切った。

 真空管ラジオは球が温まらないと音が出ないそうだ。早速試してみると果たして、古いラジオはゆっくりと囀りだした。自分が生まれる前にこの家の誰かが聴いていて、それが数十年を経て初めて自分がその音を聴いた時の不思議な感覚は忘れない。タイムマシンか玉手箱か。温かくやわらかい音色は遠い昔のものに聴こえた。
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 NHKしか受信できず、いくつかのツマミも用をなさなかったが、けなげに音を鳴らす真空管ラジオが気に入っていた。しかし、やっぱり古い機械。ある日うんともすんとも言わなくなった。
 毎日鳴っていたのが聴けなくなるのは寂しいものである。傍らにあるメイドインチャイナのソニーで何不自由はないが、店内にやわらかく流れる真空管の音がまた聴きたい。

 ある人を思い出した。海外からヘッドハンティングのオファーを受ける凄腕の技術者であり、趣味でヴィンテージオーディオを修理している方。語学も堪能でクラシック音楽にも造詣が深い氏は美しい117クーペを所有するエンスージャストでもあった。自分がお近づきになるには眩しすぎる存在だが、真空管ラジオの再生を相談すると、快諾していただいた。
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 「できましたよ。」海外を往復する生活をしている氏からの連絡に恐縮至極。他局の受信とボロボロの電源コードの交換を希望したが、実際は球の交換、液体コンデンサ?のアップデート、古い抵抗の交換、アンテナコード新調などがなされていた。とても街の電気屋では受け付けてもらえない(修理不可能)修繕がされている。さらに「ネットで取り寄せた」マジックアイが緑色に輝いていることに驚嘆の声を上げた。
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「部品代でいいですよ」と言われても、その技術をもってしてそれではあまりにも安すぎる。それでも氏は穏やかに笑うだけだ。
ならば、と以前じっくりと拝見させていただいた117クーペの模型を渡すことにした。クロモドラのホイールやナンバーを氏の愛車仕様に仕立ててある。
「僕はラジオは直せませんが、こういうものを作りました」と手渡すと、ことのほか喜んでくれた。

 氏は目を細めて模型を眺め、自分は真空管ラジオから流れる音色にウットリする。
「二人とも子供みたいだね」と家人。
模型を作っててよかったなあ、としみじみ思う時間だった。
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by match_boxes | 2018-01-17 01:17 | いにしえ模型 | Comments(0)

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